自主簡易アセスの実務

■自主簡易アセスのすすめ方

(1)企画段階

自主簡易アセスを行おうとするきっかけは以下の2通りが考えられます。

①事業者からの発意
②環境NPO等からの働きかけ

いずれの場合も、「住民等との対話を通じて、事業や地域の特徴に見あった環境配慮を行うことで、 よりよい事業を行う」ことを目標に企画を進めます。

事業者と環境NPO等が契約する場合、その役割分担を確認しあうことが重要です。 環境NPO等が第三者的な立場で関わることを鮮明にしておくことが、アセスに対する信頼を高める上で大切です。

参考までに、事業者に対する企画書と契約書のサンプル(ワード文書)を示します。事案に即して加筆修正してお使いください。

サンプル「自主簡易アセスの企画書案」
 サンプル「自主簡易アセスの契約書案」

(2)実施段階

自主簡易アセスの業務の流れは、おおまかに以下の流れにより行われます。 環境NPO等は、事業者と連絡を取り合いながら、こうした流れが円滑に進むようにコーディネートします。

このうち、②設計段階での作業の参考として、本サイトの「簡易チェック」をご利用いただくことができます。

[1] 事前調査

企画段階及び実施計画を作成する段階での情報収集として、事業の対象地域を歩いて調べ、問題となりそうなことを概略で把握する。
関係する自治体の環境配慮指針や土地利用計画、景観計画、開発要綱などの情報を収集する。

[2] 設計

本サイトの「簡易チェック」を参考にしながら、実施計画書案を作成し、事業者との協議により確定させる。
よりていねいな住民等とのコミュニケーションが必要と思われる場合には、実施計画書案に対する意見募集と回答のプロセスを設ける。
事前調査と簡易チェックを踏まえて、あらかじめ講じる環境保全策について事業者と協議し、それを前提に予測・評価を行う。

[3] 調査・予測・評価

実施計画書に基づき、現地調査や文献調査を行い、事業による環境影響の程度を見積もる。
必要に応じて、シミュレーション・ソフトを活用して、予測評価に役立てるとともに、視覚的にわかりやすい資料づくりを行う。
より専門的な観点からのアドバイスが必要な場合は、関係する分野の専門家や地域の研究機関等に相談する。

[4] 評価書案のとりまとめと公開

③の結果をコンパクトな文書にして、事業者と調整の上、評価書案としてまとめる。目安として20頁以内。
評価書案を環境NPO等または事業者のWEBサイト上に公開し、意見の募集を行う。
意見募集は、説明会の日程調整とあわせて、当該地区の自治会等に案内するとともに、地元メディアに配信して周知への協力を要請する。

[5] 住民等とのコミュニケーション

意見提出の方法は、郵送やFAX,E-Mail等、幅広く設定する。意見提出のフォーマットも作成して、意見を出しやすいようにする。
説明会は、地元自治体とも協議し、なるべく多くの人が出やすい曜日や時間帯、場所を設定する。
説明会では意見を出しにくい人や意見書を書きくにい人がいることを考慮して、説明会の際に参加者アンケートを配布し、回収するようにする。
サンプル:説明会用アンケート用紙
説明会での住民等とのコミュニケーションの取り方については、環境省『参加型アセスの手引き』(参考資料)を参照のこと。

[6] 環境保全対策の協議

住民等から出された意見(一般意見、説明会での議事録、説明会でのアンケート結果等)を整理し、これらに対する回答案をとりまとめる。その際、住民等からの意見を踏まえた環境保全対策案についても検討する。
回答案をもとに、環境保全対策のあり方について事業者と協議する。

[7] 評価書のとりまとめと公開

事業者との環境保全対策の協議がまとまったら、環境配慮の到達点や住民等からの意見への対応状況を踏まえて、第三者評価者としてのコメントを添えて、評価書をとりまとめる。
評価書はWEB上に公開し、これに対する意見があれば受け付けて、事業者に伝える。

[8] 事後の対応

環境NPO等は、工事(またはイベント実施)の途中経過、または完了(またはイベント終了)後に、評価書に示された環境保全対策の実施状況を点検し、違いがある場合はその理由を事業者に質問し、必要に応じて経過をWEB上で報告する。
■実践事例

実践例として、本会が実施してきた事例を紹介します。 各サイトに、実施計画書案や意見のまとめと回答、評価書案、評価書等が掲載されています。参考にしていただければ幸いです。

■参考文献
自主簡易アセス支援ツールの構成図